高松高等裁判所 昭和34年(く)7号 決定 1959年6月29日
少年 H(昭一六・八・一五生)
主文
本件抗告を棄却する。
理由
本件抗告の趣意は記録に綴つてある少年の法定代理人E同F子共同名義の抗告状に記載のとおりであるからこれを引用する。
論旨は少年の本件非行については親として非常な責任を感ずるも、少年は今迄悪事をしたことがなく平素温良な性格であるから家庭に於て善良な社会人に更生さし得ると信ずる、原決定はこの少年の性質と抗告人等の熱意を無視してなされたものであるから取消されたいというのである。
しかし記録を調査するに、少年は非行に対する被影響性及び衝動性が強く軽卒かつ即行的で、時の環境に従いたやすく非行に同調し反社会的行動反覆の可能性が窺知されるのである。本件事案も少年がGから東京へ行こうと誘われその旅費稼のため強盗をしようと話しかけられるや、直ちにこれに同調して犯した犯行で、而もその態様は原決定が示すとおりの兇悪事犯である。たやすくかかる挙に出る少年のこの性格と良心の減退は、少年がたとえ家庭に於て比較的温順であり、保護者等が監督に意を注ぐものとしても、記録に現われた抗告人家の家庭の状況から見るときは到底在宅保護の方法によつてはその遷善を期待し難く、一定期間国家の矯正施設に収容して根本的に適正な教育を施す必要が痛感されるのである。原審は本件事案の重大性及び少年の性質家庭環境等を併せ考え少年を中等少年院に送致する旨の決定をしたのであつて、原決定の措置は相当であり原決定には論旨主張のような処分の著しい不当も事実の誤認も又法令の違反もない。論旨は理由がない。
よつて本件抗告は理由がないから少年法第三三条第一項により主文のとおり決定する。
(裁判長判事 三野盛一 判事 渡辺進 判事 小川豪)